Japanese
English
特集 高齢者のメンタルヘルス
高齢者の英知と創造性
Wisdom and Creativity of the Older Adults
黒川 由紀子
1
Yukiko Kurokawa
1
1慶成会老年学研究所
1Keiseikai Institute of Gerontology, Tokyo, Japan
キーワード:
Oldage
,
Wisdom
,
Creativity
,
Psychology
Keyword:
Oldage
,
Wisdom
,
Creativity
,
Psychology
pp.73-80
発行日 2019年1月15日
Published Date 2019/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205756
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はじめに
高齢者の英知や創造性に目を向けることは,年齢を重ねた人間存在の多様な側面に光をあて,社会における可能性や限界を再考することにつながる。従来,高齢期は「衰退・喪失」の時期とされ,古い精神医学の教科書には,『高齢者は「頑固」,「けち」,「つまらない物を集める」』など,高齢者のネガティブな要因が列挙されていた。現在,高齢期をネガティブに捉え,「衰退・喪失」の時期とみなすことに対し,さまざまな立場から異論が出されている。医療・保健・福祉の発展,栄養状態の改善,健康教育の浸透などにより,人の寿命が延び,老化に対する予防が提唱される昨今,高齢者の心身の機能が以前より改善し,「5年から10年若返った」と指摘されることもある。世界に先駆けて超高齢社会を迎えた日本では,本稿のテーマである高齢者の英知や創造性に関する研究が徐々に進行し,高齢者の特性,役割,定義を見直す動きもある。
高齢者の英知と創造性はどのように位置付けられ,英知と創造性にはどのような要因が関連するのか,どのような高齢者を指して英知があり創造的とみなすことができるのか,高齢者の英知と創造性をめぐる課題にはどのような事があるのだろうか。
本稿では,高齢者の英知と創造性に関する言説を概観した上で,高齢者心理臨床における英知と創造性について検討を加えることとする。
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