連載 環境?!・24(最終回)
暖かい毛布で見る夢
筧 淳夫
1
1国立医療・病院管理研究所 施設計画研究部
pp.943
発行日 2000年12月10日
Published Date 2000/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901135
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何とも形容のできない一種独特のにおいと,医療機器が奏でる音が陰鬱な夜を一層印象づける中で,病棟の長い夜が明ける。ふとオープンカウンターのナースステーションを見ると,その背後のガラス越しに,ステンドグラスを通り抜けた鮮やかな色の光の筋が,暗いチャペルの中に切り裂くように差し込み,病棟に新しい朝の来訪を告げている。見た者の心をギュッとつかんで,目を釘付けにするこんな仕掛けが,以前の聖路加国際病院にはあった。まだ私が病院建築に関わりはじめて間もない頃に出合った出来事である。
写真は,1992年に改築された現在の聖路加国際病院の病棟廊下にある,かの有名なブランケット・ウォーマーである。1933年に建設された古い建物の時から,患者に毛布を掛けるときには「暖かいものを」という,看護の思いを具現化して作られていたこの設えは,この病院の患者に対する姿勢の1つの象徴として捉えられており,それが今の建物にもこのように引き継がれている。
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