連載 人間として,医療人として―東海大「安楽死」事件はわれわれに何を教えたか・8(最終回)
「安楽死」事件が問う医療人の倫理
奥野 善彦
1,2
1北里大学
2奥野法律事務所
pp.672-678
発行日 1996年9月10日
Published Date 1996/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900540
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読者は意外に思うかもしれないが,次に紹介することは,「事実は小説より奇である」ということを如実に物語る格好の事例であろう.
「最初に新聞に報道された時に,私は自分のことではないと思っておりまして,その記事というのは,先生(T医師)がそういう薬物を打ったという記事であって,それから東海大病院であるということの報道だったのですが,それでも自分たちのことではないと思っておりまして,そんな時に母から,『なんかこれ私どもと似ているんじゃないか』というような電話もありまして,ぼくはその電話でも,『それは違うと思うよ』というふうに話しております.そのあと,結局これは私どもの話だということで,母も私も分かりまして,ぼくはその注射については,母に詳しく話をしたことがなかったのですが,その時に母には,『こういう注射を打って,それから父が目を開いて死んだんだ』と,そういう話をしたんだと思います」(患者の長男の平4・11・11付公判調書).
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