連載 人間として,医療人として―東海大「安楽死」事件はわれわれに何を教えたか・5
白い巨塔―大学病院の事故であった「安楽死」事件
奥野 善彦
1,2
1北里大学
2奥野法律事務所
pp.430-436
発行日 1996年6月10日
Published Date 1996/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900505
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チーム医療が成立していたのだろうか
大学病院は,特定機能病院として,常に高度な診療を支えうるスタッフと設備をもつ,水準の高い治療体制を整えた病院でなければならない.と同時に,大学病院は高度な診療の実施,研究と並行して,これから育っていく医師の研究,研修の場でもある.育成途上の若い医師たちは,言葉を換えれば経験の浅い未熟な医師たちである.そのような若い医師たちを患者の主治医として,診療の最前線に配置するからには,バックに控えた教授以下の高度な識見と経験豊かなチームが,それを支え,常に総合的なチェックを欠かさず,組織的な連携プレーが機能することが不可欠である.すなわち,大学病院は,組織だったチーム医療の場でなければならない.
当時の東海大学病院院長は,同大学病院のチーム医療体制について,検察官に対し,「たとえば内科と外科というように,各診療科により特質があるので,病院全体として統一されたシステムはないが,内科系は概ね以下のシステムを採っている」として,次のチャートを図示して提出した.そして「当病院では複数の医師が1名の患者の主治医となるシステムを採っています.
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