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はじめに
筆者は,平成の始まりから終わりまでの約30年間,国立がん研究センター(中央病院・東病院)で看護師および看護管理者として勤務した。その後2年間の厚生労働省への出向を経て,2021年に再び国立がん研究センター東病院(以下,当院:表1)に着任した。
この30年におけるがん医療の進展は目覚ましく,新たな治療法や医療機器が開発され,死に直結した病だったがんは,生存期間が延長し,社会や地域での生活を続けながら治療・療養ができる疾患になった。2007年に施行されたがん対策基本法に基づく第3期がん対策推進基本計画(2018〜2022年度)では,「がん予防」をはじめ,ゲノム医療を含むがん治療の推進やチーム医療,多様な世代への対応などの「がん医療の充実」,がんサバイバーへの相談支援,社会連携,就労など「がんとの共生」を施策の中心と位置付けている(図1)。筆者が入職当時にがん患者さんと共に悩み苦しんだ経験や敗北感を味わった日々からは想像もつかない進化や改善がなされるとともに,「がんと共に生きること」を支える医療者への新たな課題に取り組む時代となっている。
当院では,「社会と協働し,全ての国民に最適ながん医療を提供する」の理念のもと,「世界最高のがん医療の提供」「世界レベルの新しいがん医療の創出」をビジョンに,ロボット支援手術や内視鏡治療など,患者への負担が少ない低侵襲手術をはじめ,陽子線などの高精度放射線治療,治験を含む数多くの薬物療法の実施と開発に取り組んでいる。同時にこれらのがん治療を円滑に遂行するために,医師や看護師をはじめとするさまざまな職種からなる「多職種チーム」が一丸となって,初診時から退院後まで,切れ目のない支援を提供している。
将来に向けた取り組みの1つとして,2022年7月に当院の敷地内にホテルが開業した。これまで当院への通院がかなわなかった遠方の方や,海外からの患者増加への対応,長期療養に伴う家族の滞在などが可能になった。高難度治療を受ける患者の入院前後や在院日数短縮を視野に入れた療養など,今後のがん治療を安全・安心に受けられるための取り組みである。敷地内のホテルであることから,当院スタッフも患者の目線でホテル室内のレイアウトや寝衣,食事などについて意見や提案をしている。
当院看護部は,2022年2月に開催された第36回日本がん看護学会学術集会の企画・運営を行った。本稿では,がん医療・看護の変遷と課題を踏まえた患者・家族支援や患者を支える看護師への支援などについて看護管理者にメッセージを伝えたい。
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