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Ocular surfaceにはいくつかの難治性の疾患が生じえる。例えば,膠様滴状角膜ジストロフィー,周辺部角膜潰瘍,熱・化学外傷,重症薬剤毒性,角膜フリクテン,Stevens-Johnson症候群,眼類天疱瘡,などである。30年前には,これらの疾患についての基礎的理解は乏しく,有効な治療方法は皆無に等しかった。しかし,現在では,いくつかのパラダイムシフトを経て,それなりの治療方法が確立しつつある。
どのような基礎的理解が新しい治療方法を生み出してきたかを考えてみると,少なくとも以下に述べる4つの事柄があげられる。第1は,角膜上皮と結膜上皮の相同と相違についての理解である。両者がocular surfaceを構成する粘膜上皮としての相同性を持つが,一方,遺伝子発現プロフィールは大きく異なること,生理的バリアーとしてさまざまな相違性を示すこと,さらに血管新生に関して抑制的と促進的という逆方向に作用する点などである。第2は,角膜上皮幹細胞が角膜輪部に存在するという理解である。角膜腐食,無虹彩症,Stevens-Johnson症候群,眼類天疱瘡などは,角膜上皮幹細胞の完全消失を生じるため重症眼表面疾患と定義づけられ,その治療方法として角膜上皮幹細胞移植が開発された。第3は,羊膜に代表される基質移植による角膜実質や結膜下組織への炎症抑制や新しい上皮下組織の構築である。この概念は,羊膜上の培養角膜上皮幹細胞移植や培養口腔粘膜上皮移植というあたらしい手術方法へとさらに発展し,急性期のocular surface疾患への外科的対応を可能にした。第4は,ocular surfaceに存在する自然免疫系と深いかかわりがあると考えられる常在細菌が,菌量の変化などによって角膜感染アレルギーを起こし得るという現象の理解である。この考えを発展させていくと,角膜フリクテンや角膜上皮移植後の術後管理方法がみえてくる。さらには,涙液ダイナミクスへの基礎的理解がドライアイを代表とするocular surface疾患へのあたらしい治療方法の開発を可能にしてきた。
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