連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・124
戦争や災害をどう伝えるか
柳田 邦男
pp.856-857
発行日 2016年9月10日
Published Date 2016/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686200550
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戦争や災害・事故といった多くの人のいのちを奪う事件の恐ろしさや犠牲者の家族の悲しみを,経験したことのない人が深く理解したり共感したりするのは,かなり難しい。これは大人でも子どもでも同じだ。たとえ大人が当事者に対し,「大変でしたね」「辛いですね」と,理解したつもりで同情したとしても,いつの日か自分がその身になると,《やっぱり自分が当事者になると,その辛さはまるで違う》と言うようになる。
では,当事者が経験のない人に理解を求めるのは意味のないことなのかと言うと,決してそうではない。大事なことは,未経験者が当事者と同じレベルの感情を抱くことではなく,当事者の辛さや悲しみの10分の1でも理解しようとするこころを持つことであり,当事者のために何かできることはないかと寄り添う気持ちを持つことだと,私は思っている。そういう寄り添う姿勢こそ,「こんなことは2度とあってはいけない」という当事者の訴えを支える人のつながりをつくり,広く社会に問題意識を広げていく力になるのだ。
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