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カルチュラル・コンピテンス(Cultural competence)は日本語に訳せば「多文化対応力」となろうか。私が渡米する前の日本ではあまり聞くことがなかったと思うが,今では日本に住む外国人も増え,人々の社会生活において重要な概念になっているようである。多民族国家であるアメリカに来てからは,当然ながらずっとこの言葉に触れている。特にナースとして働くにあたっては,ナースのカルチュラル・コンピテンスは医療機関がJoint Commission(JC:旧Joint Commission on Accreditation of Healthcare Organizations:医療施設認定合同機構)の認定を受けるための必要要件になっているので,さっそく入職オリエンテーションでカルチュラル・コンピテンスについての講義を受けたし,その後も毎年その知識を確認される。JCによると1),カルチュラル・コンピテンスとは,医療者や医療機関が患者のもつ文化的かつ言語的ニーズを理解し,効果的に対応する能力であり,医療機関やその従業員には次の5点が求められる。①多様性を尊重する,②自身をアセスメントする,③相違のダイナミクスを管理する,④文化的知識を獲得し,慣行化する,⑤個人やコミュニティの多様性や文化的背景に適応する。
統計上ニューヨーク市では2),家で英語以外を話している割合は5歳以上人口の47.5%であり,カルチュラル・コンピテンスの重要性はさもありなんと思うのであるが,アメリカ全体でみると2),5歳以上人口の80%は家で英語のみを話している。そして,12%はスペイン語であり,残り8%に実に多数の言語が含まれる。ちなみにニューヨーク州でみると2),家で英語以外の言語を使っている5歳以上人口の割合は29%であり,言語の多様性は偏在していることがわかる。
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