連載 職員の安心を支える病院デカ・2
―110番のたろーちゃん奮戦記 その1―長い時間と忍耐が必要な患者対応
佐藤 太郎
1
1聖路加国際病院
pp.140
発行日 2012年2月10日
Published Date 2012/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102345
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当院に勤務することになってからあっという間に5年が過ぎました。振り返ると,未知の職場環境での戸惑い,不安,責任そして新たな人間関係の醸成のなかで,私の心は常に揺れ動き,毎日が葛藤の連続だったように思います。この間に起きた問題,それぞれの対応などを綴った大学ノートは80冊にもなりました。そのなかで印象的な出来事は「ローマの休日物語」です。
統合失調症と診断された女性患者が,医師からカルテを奪いとって,自分の症状を確認するや「私を気狂い扱いした」と,医師に掴みかかり,泣き喚くなど大変な騒ぎになってしまったのです。私は,その女性を落ち着かせようと必死になって話しかけました。すると彼女は「私,ローマ生活が長いの。オードリーヘップバーンよ」と言い出しました。それでは,僕はグレゴリーペックです。さあデートしましょうと院内のエスカレーターを利用してお互いに腕を組み,上り下りとローマのスペイン広場を何回も何回も演出しました。最後には院内レストランで食事(彼女は二人前をペロリと食しました)をした後,やっとのことで帰宅していただきました。泣くに泣けない話ですが,7時間を要した案件でした。
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