連載 つらつらNPノート・8
ヘルスケア・リフォームへの懸念
鈴木 美穂
pp.1109
発行日 2011年11月10日
Published Date 2011/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102264
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2010年3月オバマ大統領がPatient Protection and Affordable Care Act(ACA)にサインし,通称ヘルスケア・リフォームとよばれる国民全員が医療保険に加入できるような仕組みづくりに着手したことはアメリカ史上画期的なことである。しかし,定職についているナースとしての私の超ミクロな視点からみると今のままのほうがよい。財源を高額所得者からがっつり徴収するならよいが,働くミドルクラスの負担が増え,私の保険料も上がりそうだ。さらに,保険加入者が増えて受診者が増えても,医療者の数は変わらないので,予約はとりにくく,待ち時間は長く,診療時間は短くなることが予想される。アメリカでは基本的にまずプライマリケア・プロバイダー(プライマリケアに従事する医師またはNP)にかからなければならないが,今でも予約は1,2週間先である。急に受診したいときに当日にかかれるところは何時間も待たなければならない救急外来である。
アメリカにいる日本人が保険がないから風邪をひいても病院に行けないと言っているのをよく聞くが,それは違う。セイフティ・ネットといわれる公立病院やクリニックなどは保険がなくても診てくれる。また,風邪ぐらいなら保険料を払って保険診療してもらうよりも,総支出では全額自己負担のほうが安いはずだ。あくまでも保険はいざというときのためのもので,保険会社が損をするようにはできていないことを考えれば明らかである。アメリカではたとえ保険に入っていても,保険会社がほとんど支払わず,到底払える金額ではない請求をされることさえある。
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