連載 スクラブ・ナース 2年生・23
脳死
鈴木 美穂
pp.359
発行日 2007年4月10日
Published Date 2007/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100632
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先日,初めて脳死状態の患者を脳死として看取った。つまり,心臓が動いている状態で,人工呼吸器が止められるのを初めて見た。日本でも,医師たちが臨床的に脳死と診断している患者を看取ったことは何回かあったが,移植医療の進んでいない日本では,人工呼吸器を維持し,心臓死を待つのが当然だった。
移植医療に携わったことのない私には,今回の脳死患者に関わる手続きは,感情的に受け入れがたい体験で,ただ先輩ナースの指示に従って行動するばかりだった。まず,医師たちが臨床的に脳死と判断し始めた時点で,家族の意思を確認する前にもかかわらず,臓器提供プログラムに連絡するよう言われた。私が「家族に脳死である可能性の告知すらしていないのに,臓器提供プログラムに連絡するのは気が引ける」と言うと,先輩ナースは「家族の返事を待っていたら,臓器が有効な間に,レシピエントが見つけられなくなる」と自ら電話をかけた。
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