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またインフルエンザの季節がやってきた。数年前にもこの連載でインフルエンザ予防のためのワクチン接種に関する日米の違いについて私の認識を述べた。そのときにはインフルエンザの予防にはワクチン接種が第一であるとするアメリカを批判するようなことを書いたのであるが,今では日本でも予防策としては流行前のワクチン接種が基本であると厚生労働省が明言しているようであり1),私の認識は時代遅れであったことを自覚した。国立感染症研究所によると,たしかに日本では1980年代後半からワクチン接種によりまれに起こる重篤な副作用に対する不適切な行政対応が強調されたり,1994年の予防接種法の改正に際して「国がインフルエンザワクチンは無効であることを認めたので,従来の強制集団接種方式を廃止した」との誤解などからワクチン接種が急激に減ったものの2),1999年冬には高齢者施設などにおけるインフルエンザの流行や小児のインフルエンザ脳症の問題が報道されるようになり,接種希望者が急増したという3)。
もはやインフルエンザの予防に関して日米間に大差はないようであり,そのほかの予防行動は流行中は人込みを避け外出を控えること,やむを得ず人前に出るときはマスクをすること,手洗いの励行,十分な休養,バランスの良い食事など,共通している1,4)。それでも,アメリカではうがいの励行が挙げられていないのは“うがい信者”の私としてはとても残念であり,また咳やくしゃみを肘で受けとめようという指導にはどうしても馴染めずにいる。しかし,日本の咳エチケットに関するWebサイトを調べてみると,多くの自治体でティッシュがない場合には手ではなく腕で覆うようにと指導していることがわかった。ウイルスがついた手でドアノブなどの物を触ると,物にウイルスがつき,そこを手で触った人が目,口,鼻の粘膜に触れると感染するためであるときちんと説明もされている5)。
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