老医空談・4
臨床外科医とエチケット
斉藤 淏
pp.1928-1929
発行日 1988年12月20日
Published Date 1988/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210243
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この表題では読者のプライドを損ね,かえって礼儀作法もマナーもモラールも身についていない老医と言われるかも知れない.私にはもちろん,大それたことを書ける資格はありませんし,昔を返りみて,一本の手紙や電話の礼すら失していたのを思い出して,エチケット失調症だったと自らを診断している現在であります.
その日は,ナースのためのエチケット絵本を編集する相談に,1年前に退職した病院に出ていた.廊下にいると,新顔が意外と多くなっているのに驚いた.その時,はるか遠方から一人の若者が白衣を羽織って,両手をはでやかに振りながら近づいてくる,太い腹を突き出している,確かに新顔のドクターである.黙礼をしてみたら,下顎を微かに動かしたようだった.この頃の若いドクターは礼儀を知らぬと嘆く声はしばしば聞いているが,このようなことを言うのであろうかと考えてみた.その会議の進行中に,中老の院長がさりげなく,"医者のエチケットの本も……"と言いかけたのには妙に刺激された.それがこの文章を書くきっかけになったのでしょう.院長にも気にかかることがあったのかも知れない.
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