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毎年7月はアメリカでは5月に卒業した医学生がレジデンシーを始める慌ただしい月である。アメリカではACGME(Accreditation Council for Graduate Medical Education:卒後医学教育認可評議会)という機関が研修施設やプログラムの認可をしたり,研修医の労働時間を規制している1)。現行の規制は基本的に2003年から実施されているもので,研修医の労働時間は,①4週間で平均して週80時間以内でなければならない,②24時間以上続けて勤務してはならない,③勤務と勤務の間は10時間以上あけなければならない,というのが主要なものであるが,2011年7月1日からは患者の安全や教育的に価値のある研修を目指して,新しく1年目の研修医に対して,これまで最長連続勤務時間制限は他の研修医と同様に24時間だったのが16時間に減らされ,また指導医や先輩研修医による後輩研修医の監督の重要性が明示された2)。このACGMEの規制を守らないと研修プログラムとしての認定が取り消されることがあり,そうなると連邦政府管轄の医療保険であるメディケアからの卒後医学教育への補助金が受けられなくなる3)。これが各研修施設に対してこの規則を守る奨励策となっている。
このような研修医の労働時間規制が設けられるようになったのは1984年にニューヨーク州で起きた,研修医の忙しさと監督の不行き届きのために患者を死に至らしめたとされるリビー・ジオン事件がきっかけとされている3)。この事件を受けて1986年にニューヨーク州保健局長は諮問委員会を招集し,この委員会の提言により,1989年,研修医の労働時間は週平均80時間以内,連続勤務は最長24時間とする条例が施行されるに至った。しかし,当時はこの規制を守るには多大なコストがかかることや違反した場合のペナルティがなかったことなどからあまり守られなかったようであるが,ACGMEのイニシアティブにより,紆余曲折を経て,2003年に上述の規制が全国的に適用されるようになったのである。
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