連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・48
生きなおす力を育む慈悲の心―『きずついたつばさをなおすには』 『エレンのりんごの木』
柳田 邦男
pp.1010-1011
発行日 2009年10月10日
Published Date 2009/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101608
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最近,いろいろな文章を書いているなかで,「生きなおす力」という表現をよく使う。「生きる力」という表現は,いかにも力強く,いい言葉だと思っているし,しばしば使ってきた。しかし,一口に「生きる力」と言っても,さまざまな例があり,それぞれにニュアンスも違う。
子どもがすくすくと育つ場合の「生きる力」は,真直ぐに天に向かって成長する若木のようなエネルギーを感じさせる。災害にもめげずに家や街を再建していく被災者の「生きる力」は,雄々しく感動的だ。愛する伴侶を失ったうえに,子育て中の自らもがんを背負っているといった苛酷な試練のなかでの「生きる力」には,深い悲しみと苦悩の感情がまとわりついている。
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