連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・107
木に育まれる人間のこころ
柳田 邦男
pp.362-363
発行日 2015年4月10日
Published Date 2015/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686200171
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こども館や幼稚園・小学校などに,絵本の読み聞かせや紙芝居をするために,時折出かける。最近も,ある地方の幼稚園を訪ねたら,昼の給食を食べていた子どもたちが,一斉に私に顔を向けた。40個の可愛いらしい顔が興味津々の表情で,私に視線を向けている。私はハッとなった。何かめずらしい動物が教室に入ってきたと言わんばかりの好奇心に満ちた目だ。私が「見る」というより,「見られている」という“眼圧”が圧倒的に強かったのだ。
人間が動物園の檻の中にいるゴリラやチンパンジーを見る時,実はゴリラやチンパンジーのほうが,こちらを注意深く見ているのだと気づく人は少ないだろう。《あの子,おれを見て何を考えているのだろうか》などと,観察されているのに。
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