連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・37
「心の故郷」を呼び覚ます絵本―『よじはん よじはん』 『ちょっとだけ』
柳田 邦男
pp.812-813
発行日 2008年8月10日
Published Date 2008/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101297
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人間には「心の故郷」とでも呼ぶべきものがあるのだろうと思う。
生まれ育った故郷の風景というものは,記憶の深いところに刻まれていて,いくつになっても人生の原点として懐しさをたたえている。老人ホームやホスピスなどで過ごしている人たちに,ギターを弾きながら歌を届けているある音楽療法士によると,リクエストされる曲の第1位は,「故郷」だという。故郷というものは,振り子に似ていると思う。振り子はどんなに大きく振れようとも,最後には中心軸のところへ戻って静止する。その中心軸に相当するのが故郷というものなのだろう。
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