映画紹介
おはん—東宝作品
外輪 哲也
1
1ぐるーぷ・まさぐらん
pp.52-53
発行日 1958年7月10日
Published Date 1958/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201687
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宇野千代が十数年の歳月をかけて,ラィフワークとして書き上げた問題作,32年度野間文学賞,第9回女流文学賞の「おはん」の同名映画化.脚本に文芸作品で定説のある八住利雄(昨年度キネマ旬報脚本賞)が当り,音楽を団伊玖磨が担当,演出を豊田四郎がやつている.豊田監督は昨年「雪国」の映画化では失敗しているが「夫婦善哉」「猫と庄造と二人の女」など関西女を描いた佳作があり,それで監督賞を穫得しているだけに同系列に属するこの「おはん」には期待がもてる.ぎりぎりの人間関係を追求したかつての腕の冴えが再現するかどうか…….
キヤストは,主人公おはんに淡島千景,芸妓おかよに山田五十鈴(昨年度キネマ旬報主演演技賞),文七に池部良,お仙に水野久美(新人)それを助けて東野英治郎,田中春男,藤木悠,三好栄子,清川虹子などの脇役陣が出演している.淡島は「夫婦善哉」で大阪女を見事に演じて演技賞をとり,本年度も「螢火」で絶妙の演技を見せて早くも演技賞候補にのぼつているだけに,ベテラン山田五十鈴との競演は見ごたえのあるものになるだろう.また,池部良も「重役の椅子」で好演しているだけに,関西弁のハンデイを克服すれば(これが作品のカギになつているとも言われている)文七が彼にはまり役だけに期待出来る.
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