特集 倫理的実践を支える看護管理者の役割
倫理的実践をはばむ組織上の課題と対応の実際―がん医療の現場から
濱口 恵子
1
,
長谷川 裕貴代
1
,
斉藤 安子
1
,
高橋 ナヲ子
1
1癌研究会有明病院
pp.189-195
発行日 2008年3月10日
Published Date 2008/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101151
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はじめに
臨床倫理に配慮したケアがますます重要な理由
医療従事者は日常の医療・ケアを行なううえで,患者の利益(アウトカム)を最大・最適にするために,患者の治療・ケアの選択,療養場所の選択など,日々さまざまな意思決定を行なっている。その意思決定にはさまざまな要因が絡み合っており(図1)1),医療の質を上げるためには医療の科学性と倫理性を考慮することが求められる。
がん治療は,手術療法,化学療法,放射線療法などのがん病変に対する治療や,支持療法,緩和ケアは日進月歩であり,高齢者でも終末期患者でも身体状況が厳しい患者に対してもがん治療が行なえるようになった。つまり,近年,がん医療の科学性は短期間で大きく変化し続けている。
さらに,科学的根拠にもとづいた医療(evidence-based medicine:EBM)の重要性が強調されているが,選択された医療の効果が個々の患者に表われるかどうかは不確実である。また,患者アウトカムの重要な指標である「QOL」は患者の主観評価であるため,患者の価値観が多様化しているなかで,これらを包括的に検討して「いま,この患者に何をなさなければならないか」を意思決定する「臨床倫理」がますます重要になっている2)。
臨床倫理に配慮した医療・ケアをするために看護師が果たす役割は大きいが,課題も多い。そこで,がん医療の現場から,臨床倫理に配慮したケアを行なうことを困難にしている要因について,当院の取り組みとともに看護管理者の役割を述べる。
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