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はじめに
●倫理的問題への取り組みと現場の状況
日本看護協会が「看護者の倫理綱領」を公表したのは2003(平成15)年であり,今年は5年目を迎える。この5年の間に,臨床での倫理的問題を検討する委員会の設立1,2),ガイドラインの作成3),倫理コンサルテーションシステムの構築4),倫理的実践能力を開発するための継続教育5,6)などの取り組み例が報告されるようになり,看護実践の場における倫理的取り組みは確実に進んでいる印象を受ける。
それには,日本看護協会の組織的取り組みとともに,看護界だけでなく,医学領域のさまざまな学術団体,そして国としても倫理的問題に対して,独自の倫理綱領7)やガイドラインの作成8-10)などの取り組みを展開しており,医療界全体において倫理に関する重要性が認識されてきていることが影響していると考えられる。さらには,日本医療機能評価機構の行なう病院機能評価の評価対象領域として,組織としての倫理的実践に向けた取り組みや患者の権利を尊重した医療プロセスが明確に位置づけられた11)ことも少なからず影響していると思われる。
また,国際化の進行で欧米から導入された,インフォームド・コンセント,診療記録の開示,個人情報の保護といった,患者の権利と医療従事者の責任に関わる倫理概念が,同時期にわが国で法整備されてきたことも,看護実践の場の取り組みが変わる要因になっていると見ることができる。
このように倫理的取り組みの枠組みづくりは進んでいるように思われるが,実際に看護ケアが行なわれている実践の場に目を転じると,倫理綱領の存在や条文の意味が理解されておらず12),またさまざまな倫理的問題に看護師が悩み,患者の人権が尊重されているとはいえない状況が存在している。
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