Japanese
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特集 精神科作業療法をめぐって
精神障害者の社会復帰をはばむもの
Obstacles in the rehabilitation of mentally disabled
大島 侑
1
Tasuku OSHIMA
1
1昭和大学付属烏山病院
pp.7-13
発行日 1969年12月9日
Published Date 1969/12/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100265
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はじめに
近年,わが国における精神医療はアメリカの影響もあって急速に進展し,ことに,精神病院では,開放体制下の生活療法がその実をあげ,多くの病者を社会に復帰させたのである.そして,最近の治療活動は院内から院外に展開され,地域精神医療の名のもとに,病者を可能なかぎり地域の中で適応かつ生活させることが最も好ましいといわれるようになってきた.
しかし一方,このように大きく展開された障害者の社会復帰活動***も,一部には,この2-3年生活療法が開始された当初期待された結果どおりには必ずしもゆかず,古い精神病院などでは,逆に,長期経過にわたる病者が徐々に増加する傾向にあり,思うように退院が進まず,また退院しても不適応をおこし,すぐに再入院してくる事実が見いだされ始めたのである.
確かに,早期発見,早期治療,社会復帰活動と一貫性のある治療体制が組めれば,相当の成果はあがるのであるが,薬物療法,生活療法などを主軸にした社会復帰活動の実施による障害者の社会復帰は,著しく促進されている中にあって,退院が進まない事実,すなわち社会復帰****が阻害される現実が見いだされ始めたのである.このことは,今までに展開された社会復帰活動のいずれかに,その原因があろうと推測されるのであるが,現状で,これら社会復帰のはばまれる原因について明らかにすることは,疾患の特殊性もあるのでかなり困難なことである.
そこで,今回は精神障害者と呼ばれる中でも,精神病院で最も多いといわれている精神分裂病者を対象に,主としてその慢性経過例の社会復帰阻害要因について,2,3の考察を加えてみたいと思う.
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