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日本看護倫理学会第11回年次大会 大会長講演
Emancipatory knowing:変革のための看護倫理
Emancipatory knowing: Nursing ethics for social change
高田 早苗
1
1日本赤十字看護大学
pp.105-106
発行日 2019年3月20日
Published Date 2019/3/20
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日本看護倫理学会の旗挙げから10年経過した。この10年で、確かに「倫理」や「看護倫理」という言葉は看護のさまざまな現場に浸透してきた。しかし、それでは医療現場における患者の権利や尊厳は、と考えると道半ばの感を抱かざるをえない。依然として続いている抑制・拘束、紙おしぼりでの清拭の広がりなど、よいケアを受ける権利はむしろ後退しているように感じられる。実践の改善にその効果が表れていると は言えない。
その理由として、まず、倫理についての私たちの理解のずれが考えられる。看護倫理は「あるべき」や「すべき」という教えや規範の形で継承されてきたが、社会の複雑化や医療の発展に伴い、それらに従っていれば正しいことができるとは限らない場面が多くなってきた。倫理は善いこと、正しいことについて考えを巡らせ、自分自身のとるべき道、行動を決めることであり、その行動に責任を負うことであるという理解自体、比較的最近のものである。ヒエラルキーが強い医療文化のなかで仕事をする看護職には、近代的に装いを変えた伝統的な価値観や教えに従うのはむしろ楽なのかもしれない。いや、学生時代あるいは卒後研修で倫理学の知識、たとえば倫理原則や倫理的な諸概念、倫理綱領などを学んできた看護師は少なくない。これらは、判断や決定を確かなものにするうえで助けになる。ただ、知識の適用ではあるが、公式のようなものがあって当てはめると自動的に答えが出てきて実践を倫理的なものにしてくれるわけではない。また、学習としては成立するが、現実の職場はパワー関係を含め、看護師の自由な発想や発言を促すというよりむしろ抑制的であり、実行に移すにはかなりのリスクを伴う局面もありうる。
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