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はじめに
初台リハビリテーション病院は,2002年6月1日に開設し,病床数157床,3病棟141床回復期リハビリテーション病棟を取得している。
当院は,開設準備段階から多職種によるチームプロジェクトを結成し,時には激論を交わしながらの基盤作り,マニュアル作成,ユニホーム,チリ箱1つに至るまで細部にわたる準備を行なってきた。今も,現場で起きてくる全ての問題・課題についてチームで検討,解決を図っている。
筆者は,これまで高齢者ケア=リハビリテーションという考えで,高齢者ケアを実践してきた。これまでの病院では,リハビリテーションはリハビリテーション室(リハ室)で訓練が行なわれ,病棟では看護師による看護が行なわれてきた。しかし,患者は,リハ室では平行棒で歩行ができていても,病棟では寝たきりの状態であったりする。これは,他職種間の情報の共有化がなされないために,否,職種間の見えない壁でやろうとしなかったために,患者の生活を中心に据えてのリハビリテーション,もしくは看護師が提供すべきリハビリテーションが疎かになり,患者不在の,それぞれの職種がばらばらに医療を提供してきたに過ぎなかったことを示しているのではないだろうか。患者の生活の向上が目的であれば,専門職種であるわれわれは,それぞれの職域にこだわるのではなく,患者の生活を見据えて,お互いが情報を共有化しなければ専門職種として目的を達成することはできないと考える。そのうえでチームアプローチは必須である。
筆者は,当初,上記の考えがありながらも,準備の段階から全て多職種参加の会議がもたれるなか,どうして看護だけで話し合えないのかと,看護師として寂しい思いをしたのも事実である。それは,今思うに,多職種の中で議論する場合,どうしても「職種」を相手にしてしまい,相手の考えだけにとらわれ,目の前から「患者」の問題は,どこかへ飛んでしまい,お互いの職種間の考えの相違だけを批判する形になりがちで,同職種による話し合いが居心地がよい感じであった。しかし,否応なしにこうした環境に放り込まれることで,多職種とのチームアプローチが自然に体得できた。その後も当院では,徹底したチームアプローチの構築のために,あえて同職種の会議はもたず,院内の公式の会議は全て多職種によるチームで構成されている。
この多職種による会議では,試行錯誤を繰り返しながら悪しき慣習を刷新しようとしながらも,時には意見が分かれ合意が得られず,お互いに理解と納得がいくまで何度も話し合いを重ねることもある。動き出すまで時間はかかるが一度決定すると事は早いという徹底した現場中心のシステムを構築している。本稿では,その取り組みについて紹介していきたい。
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