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はじめに
東京都立松沢病院(以下,当院)では,2001(平成13)年4月より,看護部に専任リスクマネジャーというポストが新設され,第1号として筆者が任命された。
それまでは病棟主任としての役割を全うする傍ら,兼任のリスクマネジャーとして活動を続けていた。しかし,医療事故をめぐって繰り広げられている報道,紛争,先駆的な施設の取り組みなどに影響を受けて,たとえ精神病院であっても,組織としてリスクマネジメントに取り組むべきだという機運が院内で高まり,専任のリスクマネジャー配置への要望も強まっていた。そうした背景から,都立病院では3人目(広尾病院,駒込病院に次ぐ),精神病院では異例(当時は日本初)の専任のリスクマネジャーが誕生した。
現在,筆者が専任リスクマネジャーとなって3年が経過しようとしている。リスクマネジャーとしての活動の結果として,医療事故の減少が最も大きく期待されていることは言うまでもないことであり,専任である以上,明確な成果を示す必要がある。医療事故の減少は,病院としての評価および看護師の士気にも関わる問題である。さらには患者の満足度にも影響を与え,安全で安心できるという,受診病院の選択時の指標にもなる重要なものである。
リスクマネジャー専任化の効果を評価する際には,この「医療事故の減少」という指標が医療経済学領域の研究では用いられている。ここでは,医療事故の減少を数として捉えるのではなく,患者が負担する追加医療費としてとらえる。こうした医療コストに関連づけた研究により,専任リスクマネジャーの経済的効果が明らかになってきている。
そこで今回,専任リスクマネジャー配置の効果を示す経済的指標として,追加医療費に焦点を当てた研究に取り組んだ。
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