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●専任リスクマネージャーの概要
1999(平成11)年7月の開設以来,都立豊島病院(以下,当院)は患者本意の医療の推進を前提に,より安全確実な医療の実践をめざして積極的に医療安全対策に取り組んできた。2002(平成14)年頃,年々リスクマネジメントに対する社会の関心が高まる中で,当看護科はリスクマネジメントのこれまでの取り組みが本当に有効であったのかどうかを実感できず疑問を感じていた。この問題を解決するために,「BSCによるリスクマネジメントシステムの構築」をすでに提案していた熊川医師とともに,2002年8月より共同研究プロジェクトを立ち上げた。体系的にリスクマネジメントおよびBSCの学習を開始し,2003(平成15)年1月より看護科および各看護単位にリスクマネジメントのBSCを導入した。
また,都立病院においては高水準の安全管理体制の確保のため,特定機能病院と同等の安全管理体制を整備する目的で,2003年4月から医療に関わる安全管理の基本方針を決定する組織改正が行なわれた。その一環として病院には専任リスクマネージャー1名(看護師)が配置された。専任リスクマネージャーは,医療法施行規則で定められている「専任の医療にかかわる安全管理を行う者」に相当し,病院全体の医療安全対策推進の中心的な役割を担っている(図1)。
医療リスクマネジメントは基本的に,「リスクの把握」「リスクの評価・分析」「リスクの改善・対処」「リスク対策の再評価」の4つのプロセスで実行するが,このプロセスはPDCAサイクルそのものである。実際には「リスクの改善・対処」と「リスク対策の再評価」のプロセスが実行困難であることが多く,リスクマネジメントの成果を得るためにはこれらのプロセスを確実に実行することが重要である。
2003年1月からのBSCによるリスクマネジメントの取り組みから,BSCを活用するとリスクマネジメントのPDCAサイクルが可視化され,戦略を確実に実行することができることが明確となった。このような背景から,2004年(平成16)年度より専任リスクマネージャーの戦略展開に戦略マネジメントシステムとしてBSCを導入した。
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