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はじめに
混合病棟は,運営方法によっては効率的なベッドの確保が可能になり,病床利用率の上昇,在院日数の短縮という,病院経営上の利点がある1)。一方,看護スタッフにとっては,単科からなる一般病棟(以下,一般病棟)と比べて多種多様な患者を担当することになる。その結果,看護業務が煩雑になり,業務量が増える可能性がある。実際,混合病棟に勤務する看護師の準夜から深夜にかけてのエネルギー消費量は,一般病棟よりも高いと報告されている2)。混合病棟では,看護業務の増加によって,看護の質が低下し,患者が満足する看護の提供が難しくなる3)。また,一般病棟と比べて多様な業務を担当することになるため,各々の看護スタッフが自らの役割を十分に把握していない,看護に対する責任感が薄い,という指摘がある4)。このような混合病棟がもつ問題点を背景に,混合病棟では一般病棟よりも看護師による医療事故の頻度が高い,と報告されている5)。
混合病棟と一般病棟との間の看護業務の差異は,看護スタッフの仕事に対する満足度にも影響する可能性がある。宮脇らは,混合病棟の看護師の充実感は一般病棟に比べて,低い傾向にあると報告している6)。逆に,混合病棟での看護師の満足度は,一般病棟に比べて著しく高い,という報告もあり7),必ずしも一定していない。
看護業務に対する看護師の満足感や達成感は,看護の質を向上させる8)。看護の質とは,個々の患者に対してどれだけ適切な看護を供給できるかということであり9),質のよい看護は患者の予後を改善させる10)。したがって,混合病棟特有の問題点を明らかにして改善することは,そこで勤務する看護師の満足度を改善するだけでなく,混合病棟の入院患者に対する医療の質にもよい影響を与えるだろう。
そこで,筆者らは,混合病棟の看護業務が一般病棟よりも煩雑なため,看護師の負担が大きいという仮説を立てた。この仮説を検証するために,混合病棟と一般病棟との間での看護の質を検討した。具体的には,いくつかの指標を設定して11,12),両病棟に勤務する看護師にアンケート調査を行なった。また,両病棟の間で看護師の満足度に差異があるかどうかを検討した。
以上の結果を踏まえて,混合病棟における看護業務をどのように改善するべきかを考察した。
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