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はじめに
史上初の診療報酬マイナス改定,3割自己負担など医療を取り巻く環境は厳しくなっているにもかかわらず,病院機能評価,診療情報開示,セカンドオピニオンなど医療機関に求められるレベルは高度かつ多様化している。患者はテレビ,雑誌,インターネットなどのメディアから病院情報を得たうえで受診するようになり,医療機関を見る目が肥えてきたと言える。医療職にとって,さらに課題が与えられているわけだが,このような厳しい状況下で生き残っていくために,病院はあらゆる面での質の向上と体力アップが必要であり,患者に最も近い存在である看護師のレベルアップも不可欠である。
しかし,看護教育にはいろいろな問題点がある。例えば,交代制勤務のため院内の勉強会に全員が出席することはできない。勤務状況や家庭内での役割のために学習に当てる時間は不足しがちであり,卒後教育のモチベーションを維持するのは簡単ではない。近年の医学の進歩,医療機器の発達は目覚ましく,かつ医療情報が氾濫しているため,必要な知識の選択が困難になっている。そうかと言って経験に頼り,新たな知識を蓄積しないでいると,あっという間に取り残されてしまう。
当院は,腎臓病(透析)と糖尿病の専門病院である。透析医療は専門性が高く,複雑な透析機器を取り扱うため,高度な知識と技術が要求され,また,全身に合併症を起こすことから専門領域外の知識も求められるため,新人看護師を一人前に育て上げるための労力はかなり大きい。
こうした状況のもと,筆者ら教育スタッフが効率性の高い教育手法を模索していたところ,一昨年,e-Learningという教育手法があることをインターネットで知った。医療機関での導入事例はまだ少ないようであったが,その魅力,可能性に惹かれて当院に導入してみた。そして2年目を迎え,効果と問題点が浮き彫りになり,今後の方向性も見えてきたところである。本稿では,この独自の教育手法と当院での取り組みを紹介したい。
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