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さる2003年5月10日,大分県立看護科学大学・大分県看護協会の第5回看護国際フォーラムにおいて,韓国赤十字看護大学学長で,前韓国厚生大臣を務められた金 慕妊先生に,「大韓民国における看護政策」という演題で講演をいただいた。金先生はほかにも,大韓看護協会会長(1978~1984年,1988~1990年),国際看護協会(ICN)会長(1989~1993年)を歴任されている。
韓国の看護教育における大学・大学院教育はアメリカの影響を強く受け,日本よりも早い時期から充実している。このため,4年制大学を卒業する看護職が,2003年では25%を占めている。また,現厚生大臣も看護職が担当しており,政策的にもパワフルな活動を展開している。盧大統領の新しい政策には,医師と看護師との関係の改善などが盛り込まれているが,その背景には,金先生,あるいは現在の厚生大臣などのように,看護職が医療・保健に関する政策決定の中枢にいることが大きく関係していると考えられる。
日本の看護界も,国民・患者の方向を向きつつ,自分たちの社会的な地位の向上を目指す必要がある。このことが,金先生の言われるように,21世紀の保健医療政策に看護職が大きく貢献していくことにつながると思われる。
金先生の講演をうかがって,日本の看護界は,隣国である韓国の看護職のパワー,政策決定に対する積極的な組織的アピールのやり方などについて,学ぶべきことが数多いと改めて実感した。韓国と日本の看護界とは,すでにお互いに数多くの情報交換を行ない,影響し合ってきた部分も多い。しかし,大学,実践レベルなどさまざまなレベルで韓国との密接な関係を図ることが,今後ますます必要であることを痛感する。そこで,ここに金先生の講演内容をできるだけ忠実に紹介させていただく。
なお,本稿をまとめるにあたっては,韓国からおいでいただいている本学国際看護学の金キム 順子スージャ教授に多大なご尽力をいただいた。ここに感謝の意を表しておきたい。金教授は,前任の洪ホン 麗信ヨウシン教授と同様,韓国内にたいへん幅広い人脈を持っておられるので,さまざまなご相談に乗っていただけるものと思い,ご紹介させていただく。
(大分県立看護科学大学・桜井礼子)
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