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はじめに
わが国における大学通信教育の制度化は,1947(昭和22)年の学校教育法から始まった(私立大学通信教育協会,2009)。1983(昭和58)年には,放送大学,2001(平成13)年には放送大学大学院が設置され(放送大学,2009),2002(平成14)年には日本初のインターネット大学院が信州大学に開設された(放送大学,2009;不破ら,2004)。大学における通信教育は,設置当初は,講義録や,教員と生徒の書簡によるやりとりが主だったといわれるが,TVやCD─ROM,DVDなどの視聴によるものへと変化し,現在ではインターネットを利用したe-learningを中心とする双方向性の情報のやりとりが中心(吉田,2005)になってきている。
e-learningとは,パソコンやコンピュータネットワーク,インターネットなどを利用して教育を行なうこと(日本イーラーニングコンソシアム,2008)である。Webブラウザなどのインターネット,WWW技術を使うものは,特に「WBT」(Web Based Training)や「Web-learning」などと呼ばれる(日本イーラーニングコンソシアム,2008)。e-learningの特徴には,教室で学習を行なう場合に比べ,遠隔地でも時間を問わず教育を提供できる点(劉・木村,2004)や,テキスト印刷や場所の確保などに費用がかからないために比較的安価で学習できる点(黒田・岡本・西之園,2007),コンピュータならではの多彩な機能を用いた教材や最新の教材を利用して学べる点(劉・木村,2004)などがある。一方で,教育の場所や時間に制限がないことによる学習意欲の維持が困難になりやすい(中山,2004)というようなデメリットもみられる。
看護学分野においては,2002年ごろからe-learningを利用した教育システムの構築と評価に関する研究(研究代表者:中山和弘,2006)がみられはじめた。さらに2004(平成16)年からは「21世紀COEプログラム」採択プログラムとして聖路加看護大学(2008),「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」採択プログラムとして,2004年に九州大学,2005(平成17)年には大阪府立大学による取り組みが始まった(九州大学,2009;大阪府立大学,2009)。いずれも先駆的な取り組みであり,看護教育に対する評価は高い。看護基礎教育だけではなく,卒後教育にもe-learningは活用されている。例えば,日本訪問看護振興財団では,訪問看護e-learningというプログラムを有し,訪問看護に関する基礎的知識の取得を進めている(日本訪問看護振興財団,2010)。
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