特集 緩和ケアの質マネジメントとその評価を考える
緩和ケアにおけるEBMの考え方―「がん疼痛治療ガイドライン」作成を通して
瀬戸山 修
1
1爽秋会クリニカルサイエンス研究所
pp.988-992
発行日 2005年12月10日
Published Date 2005/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100272
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はじめに
Evidence-Based Medicine(以下,EBM)は,医療の質を向上させる方策として登場してきて以来,著しく普及してきている。このEBMは「個々の患者のケアに関わる意志を決定するために,最良のエビデンス(科学的根拠)を,一貫性に,明示的な態度で,思慮深く用いること」と定義され1),文献検索によるエビデンス情報,患者の意向・価値観,専門的臨床能力・経験の要素を臨床現場で統合し,目の前の患者に合わせて,エビデンスをいかに適切に利用していくかという方法論である。また,その目的は,バイアスや医療専門職の思いこみ・思惑を排除し,目の前の患者に適切な医療を提供することである1)。
しかし緩和ケアの分野では,多様な治療歴,症状を呈する患者を対象とするため,予後・予測因子を層別化したランダム化比較試験(RCT;Randomized Controlled Trial)の結果などの質の高いエビデンスは少ない。そのため,緩和医療ではEBMの応用は不可能であり,Narrative-based Medicine(以下,NBM)を中心にすべきとの意見もある。
そこで本稿では,日本緩和医療学会の「がん疼痛治療ガイドライン」2)作成に関わった関係から,がん疼痛治療を例に緩和ケアにおけるEBMの考え方を述べることにする。
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