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クリニカル・オーディットとSTAS
STAS(Support Team Assessment Schedule:スタッス,またはスタス)は,1990年代初頭に英国でHigginsonによって開発された,緩和ケアにおけるクリニカル・オーディット(Clinical Audit)のためのツールである。オーディットとは日本語で「監査」と訳されることが多い。STASが開発された当時の英国では,NHS(National Health Service)の政策のもと,医療サービスの質の充実のために,メディカル・オーディットの考えが重視されていた。当時の白書「Working for patient」では,メディカル・オーディットを「診断,治療の方法,資源の利用,その成果,患者のQOLなどを含む医療ケアの質を系統的,批判的に分析すること」と定義している1)。オーディットの目的は,単に「監査」や「評価」をするだけでなく,図1のようなオーディット・サイクルを回転させることにある。まず,(1)ケアの基準や目標を設定し,(2)臨床の実践活動をモニタリング,観察することによりデータ収集を行ない,(3)そのデータを分析することにより,うまくいっている部分,改善の必要性がある部分などを検討し,臨床へフィードバックしたり,新しい基準の作成や改善を行なう,というプロセスである2)。
当時の英国では,緩和ケア領域における適当なツールがなかったため,HigginsonらによってSTASの開発が行なわれた。緩和ケアにおけるクリニカル・オーディットの意義について,Higginsonは表1のように説明している3)。STASは,当初がん患者をケアする在宅チームのためにつくられたものであったが,より広いセッティング(病棟やAIDSなど他の疾患)で使われるようになり,広く使用経験が報告されている4-9)。
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