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はじめに
EBP実行(implementation)の推進のために,前号と本号でいくつかのEBP実行モデルを紹介してきた。これらモデルの実行プロセスのなかで,必ず用いられるのがEBPガイドラインである。EBPガイドラインは,EBPを実行し普及していくためには不可欠なものであり,EBPの3つの構成要素(「最良のエビデンス」「臨床的専門技能」「患者の価値観」─前号焦点を参照)のうち,最良のエビデンスを集大成したものである。
本号の筆者の別稿,「臨床でEBPを推進するための『実践者主導モデル』─IOWAモデルとAHRQモデル」(pp.271-287)のなかで紹介したように,既存のEBPガイドラインが作成されている場合には,後述するAGREE(Appraisal of Guideline Research and Evaluation)の評価基準などを用いて,その内容を吟味した上で活用していくことができる。欧米ではさまざまな政府機関や研究機関(NPOや大学研究所)が,EBPセンターとして数多くのEBPガイドラインを作成している。ただし,EBPガイドラインは,そのまま使用されるべきものではなく,それを採用する組織や臨床現場の現状に適用していくことが必要であり,また「患者の価値観」を確認し尊重しながら,看護師の「臨床的専門技能」を用いて判断しつつ,最良の実践を選択し実施していくことになる。
欧米で開発されたガイドラインは,日本での実践変革に大いに参考になるものであるが,医療制度や環境が異なることから,日本の実情に合わないケースも多い。また日本でも,医学を中心として診療ガイドライン等が作成されているが,看護ガイドラインの作成や公表は欧米に比べてまだ発展途上であり,今後の実情に合わせた看護ガイドラインの作成と公表の促進を図っていくことが急務である。
本稿では,EBPガイドラインの作成方法について,Iowa大学看護学部老年看護リサーチセンターのリサーチトランスレーション・普及部門〔the university of Iowa gerontological nursing intervention research center, research translation and dissemination core(RTDC)〕において作成された『EBPガイドラインを作成するためのガイドライン(guidelines for writing EBP guidelines)』(Titler & Adams, 2005)の内容について,その概要を紹介する(このガイドラインはIowa大学看護学部で販売されている)。これまで,Iowa大学のRTDCで開発された老年看護に関するEBPガイドラインは34に上る(表1)。このなかのガイドラインの記述なども引用しながら,『EBPガイドラインを作成するためのガイドライン』を紹介していきたい。また写真は,こうしたガイドラインの一部である。
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