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はじめに
長浜赤十字病院(以下,当院)にNSTが立ち上がったのは2003(平成15)年12月のことである。13の看護単位のうち,わずか2病棟でのスタートだった。当時,大学病院ほどではないにしろ,各診療科や職種間の壁は厚く,またNSTと名乗ってはみたものの,スペシャライズされた栄養管理に関する知識は誰ももっていなかった。1人目のNST回診が終わって廊下に出たとき,「チーム医療みたいだな……」とNSTリーダー(副院長,後のNST委員会委員長)がポツリと言ったのを鮮明に記憶している。
その後のNST回診でも,1人目のときと同様に患者を取り囲み,多職種がそれぞれの切り口で思考を巡らしていた。その瞬間は,誰がどれだけ栄養に関する医学的知識があるかが問題とされるのではなく,各領域の知識と職業アイデンティティに基づいた発言をし,メンバー全員が同じ土俵で対等にカンファレンスしているという実感がもてた。それぞれの切り口で語られる言葉は興味深く,新しい取り組みに対する一所懸命さがあった。
いま,あの日から丸2年が過ぎようとしている。あの頃と比べると当院NSTは,栄養管理に関する知識・技術・組織力のいずれをみても著しく成長し,2004(平成16)年8月にはNST稼動施設認定も受けることができた。他施設同様,NST導入当初から専従のNSTメンバーは配置せず,現在もそれぞれの職種が日常業務の傍らNSTメンバーとして活動している。唯一の違いといえば,専門看護師(以下,CNS)である筆者がNSTの立ち上げを依頼されて以来,それらの企画・運営を中心的に推進していることだろうか。
本稿では,NST立ち上げの担い手として,当院におけるNST立ち上げまでの経緯と現状を振り返るとともに,中規模総合病院におけるNSTの組織化のプロセスをVE活動の視点を用いてとらえ直してみたい。また,チェンジエージェントであるCNSとして,医療チーム活動推進の困難さと醍醐味にふれながら,CNSがNSTの推進者として存在することの効果についても報告する。
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