特集 NSTとクリニカルVEで考える医療・看護の機能を向上させる“チーム”
尾鷲総合病院NSTの運営の実際とクリニカルVE
川口 恵
1
,
東口 髙志
1,2
,
大川 光
1
1尾鷲総合病院NTS&CP Complex (NCC)
2藤田保健衛生大学医学部外科学・緩和ケア講座
pp.25-31
発行日 2006年1月10日
Published Date 2006/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100004
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はじめに
栄養管理は,すべての疾患治療のうえで共通する基本的医療のひとつである。この理念のもと,患者個々の症例に応じて適切な栄養管理を実践するNST(Nutrition Support Team;栄養サポートチーム)は,1970(昭和45)年,米国のシカゴで誕生した。代謝・栄養学を専門とする医師,栄養士,薬剤師らによって,多職種による専門的な栄養管理チーム,すなわちNSTの必要性が提唱されたのが始まりだといわれている。その後全米,さらに欧州諸国へと急激に伝播していったが,日本では,医療環境や専属チーム体制であるNST運営システムの違いなどから,長年にわたりNSTが受け入れられなかった。
しかし1998(平成10)年以降,日本の医療状況を考慮した新しいNST運営システム“Potluck Party Method(PPM:持ち寄りパーティー方式/兼業兼務システム)”の考案により,本格的な全科型のNSTが次々と設立され,その有用性が実証されている1)。尾鷲総合病院(以下,当院)では2000(平成12)年7月に,PPM-II方式を用いた全科型のNSTが設立され,稼動をはじめた。
NSTの導入により,病院機能は活性化し,医療の安全を確保するとともに,病院の質の向上と運営の合理化や経営改善をもたらした。NST導入の手法は,「最低のライフサイクルコストで必要な機能と価値を創出する組織的努力である」と定義されている「VE(Value Engineering)」の方法論と一致している。
本稿では,当院NSTの運営の実際を通して,医療の現場におけるVE,すなわち「クリニカルVE」の考え方について述べる。
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