特別記事 脳科学からみた看護
脳科学からみた看護
南 裕子
1
1兵庫県立看護大学
pp.253-254
発行日 2002年6月15日
Published Date 2002/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900676
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あらゆる人間科学は脳科学抜きに語れぬ時代
人が生まれ,成長しながら生活し,死を迎えるまでの期間,そして,人が感じ,考え,思い,判断し,行動する時,常に脳がフル回転してそれを支えている。人が眠っている時も脳はその働きを止めない。人間の脳には,1000億個の細胞があるといわれるが,複雑で高度な機能を持つ脳はまさに人間全体の司令塔であり,かつ,人と環境の変化に対応しながらダイナミックに自らの脳を変化させる力がある。人間の進化の過程で,脳は言語を生み出し,言語によってさらに脳を変化させてきている1)。
ところで,脳科学とは,脳を知る学問であるが,脳を知るとは,自分を含む人間を知ることであり,つまり人間が何かを認知する時,感じる時,思考する時,行動する時に,脳のなかはどうなっているのか,そのことを具体的な根拠をもとに説明しようとするのが脳科学である2)。脳科学は近年,急速に発展している分野である。1990年にアメリカ上院でdecade of the brain「脳科学の10年間」宣言が議決されて以来,世界的に脳研究が推進されるようになり,その結果脳科学は飛躍的に発展し続けているのである。知見は日々更新され,今まで謎とされてきた現象のメカニズムが次々と説明されるようになってきている。そのような状況のなかで,いずれあらゆる人間科学は脳科学を抜きに語れなくなるだろうともいわれている。
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