Japanese
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シンポジウム 新しい精神医学の構築—21世紀への展望
脳科学からみた精神医学の未来
Perspectives of Psychiatry as viewed from Brain Science
伊藤 正男
1
Masao ITO
1
1理化学研究所脳科学総合研究センター
1RIKEN Brain Science Institute
キーワード:
Creation of drugs
,
Transplantation
,
Gene therapy
,
Hierarchy
,
Cerebellum
Keyword:
Creation of drugs
,
Transplantation
,
Gene therapy
,
Hierarchy
,
Cerebellum
pp.159-163
発行日 2000年2月15日
Published Date 2000/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902166
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間近に迫る21世紀には精神医学領域に大きな変化が起こるだろう。20世紀前半の物理化学の時代から,後半の生命の時代に移り,次の世紀には脳とこころの時代への移行が予測されるからである。半世紀にわたり基礎研究室の中で地道に成長してきた生命科学が実効を発揮するようになり,人間への全面的な医学的応用が図られるようになった。さらに脳科学の目覚ましい進歩により,これまでかたくなに拒まれてきたこころの聖域への接近も次第に可能になるだろう。
脳科学には大きく分けて3つの領域がある(図1)。第1に,「脳を知る」のスローガンに示されるように,脳の構造と機能を科学的に解明する研究領域であり,自然科学の新しい大きな複合領域である。第2に,脳神経系の種々の病気,老化,薬物中毒などの深刻な問題を解決すべく「脳を守る」をスローガンとする臨床病理学的な研究領域である。第3は,脳に似たコンピューターやそれを搭載したロボットを作ろうと試みる「脳を創る」情報科学的研究領域である。これらの3つの領域の相互に密接な相互作用の上に,脳科学の効果的な発展とその成果の社会への急速なフィードバックを可能にしようとするのが,「脳の世紀」,「脳科学の時代」として提唱されている日本の脳科学推進計画である。精神医学を含む「脳を守る」領域の研究は「脳を知る」,「脳を創る」領域の研究から大きな促進的な影響を受けると同時にこれらに対して大きなインパクトを及ぼすだろう。これまでの我が国ではこのような学際的な総合が大きく欠如しており,その観点からも未来へ向けての重要な試みである。
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