焦点 痴呆性老人の看護に関する研究
報告
痴呆性高齢者への回想法—グループ回想法の効果と意義
野村 豊子
1,2
1高齢者ケア研究所
2東京都老人総合研究所
pp.225-242
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900346
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
はじめに
近年,痴呆性高齢名への心理,社会的アプローチの1つとして回想法が普及し始めている。60年代の前半にButlerは,老化の徴候と否定的に見られがちであった高齢者の回想を,人生の最終段階の課題に向かう際に積極的な意味をもつものであると提唱した1)。その後欧米を中心に回想法の臨床実践および理論研究が展開されている2)。
回想法の臨床・実践の対象は健常老人,うつ病,痴呆性高齢者と広範囲にわたり,さらに適応の過程を促す方法として高齢者以外の年齢層への活用も見られる。また,マクロな視点からReminiscence(回想),Life Review(人生回顧),Autobiography(自分史),Narrative(体験談)という4者間の機能の相違や類似も示唆されている。最近では,コントロール群をおいたグループ回想法の効果評価,回想法一般とLife Reviewを分離した上でのLife Reviewの内容と効果に関する研究,回想過程の明確化および,量的分析と質的分析の併用など,研究方法の開発が蓄積されている。本論の末尾にHaightによる1990年から1993年の3年間の文献レビューの訳出を資料として添付した(63頁以下)3)。近年,回想法への関心が飛躍的に増大していることが明確に示されている。
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.