焦点 痴呆性老人の看護に関する研究
解説
痴呆性老人のコミュニケーション行動
矢冨 直美
1
1東京都老人総合研究所(精神医学部門)
pp.243-252
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900347
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はじめに
痴呆性老人を介護する人や家族が,痴呆性老人とどのような関わりを持とうとするかは,痴呆性老人のコミュニケーションの能力や行動をどのように理解しているかに大きく左右されているものと思われる。たとえば,痴呆性老人は2つの情報を並行処理する能力が低下しているが,その理解が欠けていると,痴呆性老人に一度にいくつもの情報を伝えて痴呆性老人に混乱を招くことになる。また,逆に,痴呆性老人のコミュニケーションの能力を過小評価してしまうと,老人に対するコミュニケーションの内容が乏しくなったり,コミュニケーションそのものへの動機づけが弱くなってしまうであろう。
本稿では,痴呆性老人のコミュニケーション機能に関するこれまでの研究を概観し,痴呆性老人のコミュニケーション行動の特徴を考察する。さらに,そこから得られた結果から痴呆性老人のコミュニケーション行動と認知的障害の関係を論ずる。最後に,コミュニケーション機能の低下の心理社会的要因について述べ,痴呆性老人に対するコミュニケーションのあり方について述べる。
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