想園
回想
樋口 香子
1
1新別府病院
pp.71
発行日 1964年4月1日
Published Date 1964/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912221
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准看護婦になってから早いもので3年目にはいり,今年の3月高校通信制課程を苦しみをかみしめ,楽しみを倍加して,やっとの思いで卒業した。そして引き続き大学の社会福祉科に籍を置いて《徳を行うことが幸福になる》とか《汝自身を知れ》と古代ギリシア哲学者がいった言葉に感動している。私が進学コースを選ばずに大学に進学したのは学院時代にケースワーカーという職業のあるのを知り,それについての本をあれこれと読んでいくうちに,私を魅了してしまったのである。また学院時代に患者さんから身上相談を受けた私は悩みを聞いてあげるだけの力しかなく,その時私は自分がみじめでしかたがなかった。やっぱり学問と教養とは合致しているのだということを痛感しそれが学院を卒業,2年後に高校卒業,大学の福祉科入学という希望にかわり,やっとその希望がかなえられたのである。
しかし,適齢期にある私は人が洋裁や和裁,編物と花嫁修業をしていると自分は皆が花嫁修業しているかわりに勉強しているのだからと割り切っても我意にはなかなかならない。それからすると学院と高校との生活の両立はじつに妙技であったと思うのである。なぜなら入学時もすでに3, 4年年輪が多かったにもかかわらず,レジャーブームと青春を謳歌している周囲の人々とは裏腹に昼は学院夜は高校と宿題,レポートに追われた生活であったが苦しいとは思ったことがない。
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