焦点 看護におけるQOLの研究[2]
綜論
クオリティ・オブ・ライフ(QOL)その測定方法について
黒田 裕子
1
1東京医科歯科大学医学部保健衛生学科・看護学専攻
pp.182-192
発行日 1992年6月15日
Published Date 1992/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900077
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QOL測定の目的
1)一般的なQOL測定の目的
最も広く解釈すると,国民のクオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life,以下QOLと略す)の向上は一国の社会政策課題の1つてある。したがってQOL測定の関心の高まりは,ある程度の産業社会の発達のあと,1つの転換期を迎えた証拠でもある。前号の概念的な側面でも触れたが,QOLは未だ実体についての認識が確定的てはない。しかしながら,個人の意識的,心理的,主観的な側面を重視しようが,個人の環境を重視しようが,QOLの測定が「人間がより良く生きる」ことを目的に置いている点は疑いようがない。ただ測定される側面や方法次第では,「より良く」の解釈が異なってくる。したがって,QOLとは誰が何時どのように捉えるものかという議論なしで適切な測定はありえないことがわかる。
この議論はともかく,毎年出版される『国民生活白書』は現在のところ我が国の国民のQOL測定の結果と見なすことができよう。平成3年度版によると,国民の意識の中に経済面以外の生活をもっと人切にしようという意識が強くなってきている点が指摘されている1)。つまり,「人間がより良く生きる」ために人切だとされている部分がマクロな視点からのQOL測定によって明らかにされ,これによって社会政策が少しづつ国民のQOL向上の方へ向かっていくはずである。
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