連載 人間として,医療人として―東海大「安楽死」事件はわれわれに何を教えたか・6
クオリティ・オブ・ライフ―その時,プライマリ・ナースがなすべきことは?
奥野 善彦
1,2
1北里大学
2奥野法律事務所
pp.506-516
発行日 1996年7月10日
Published Date 1996/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900516
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
患者のプライマリ・ナースであった2人の看護婦と看護士は,東海大学病院におけるプライマリ・ナースについて,「患者の入院から退院まで1人の看護婦が継続して看護していく制度です」と異口同音に説明している(N1は平4・3・2付検面調書,N2は平4・2・18付検面調書).その彼女たちの調書を注意深く読んでみても,プライマリ・ナース制度の目的である「継続して患者の看護にあたることにより,患者に対する看護の質を高めること」が,どうも彼女たちの認識から欠けているように思われる.
これまで繰り返し述べてきたとおり,看護者たちが法廷に呼ばれて証言をしているわけではない.筆者は,患者の看護にあたったナースたちの証言を,証拠として採用された供述調書から知り得るのみであるため,もとよりその間の事情を十分把握しているとはいえない.しかし,患者の最初の入院から死亡当日まで看護にあたり,プライマリ・ナースの1人でもあったN1の次の供述からは,東海大学病院におけるプライマリ・ナースが,その本来の目的をよく果たしていたのか,おおいに疑問を抱かざるをえない.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.