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行為の中のリフレクション
セッションAでは,事例に生じたできごと(現象)の経緯を振り返りながら現象の本質にせまっていくことをめざすために,新たな抄録のフォーマットを用意した。とはいえ実際には,必ずしも抄録の中で十分なリフレクションが展開され,投稿者自身が実践したケアの意味へとたどり着けているわけではなかった。Schön(1983)は,行為のリフレクションを,「行為の中のリフレクション(reflection in action)」と「行為についてのリフレクション(reflection on action)」の2つに大別している。「行為の中のリフレクション」は,実践時に生じた予想外のできごとに対して臨機応変に対応するために,“行為をしながら同時に”行われる振り返りである。このリフレクションを通して提供されたケアとその成果こそが,セッションAで言語化を求めているものである。しかし,当事者である看護師の多くは,事後的な振り返りである「行為についてのリフレクション」の場面において,「これがよくなかったのではないか,こうすべきだったのではないか」というような自分自身の「ありよう」に意識が向きがちであり,実践中に生じた「行為の中のリフレクション」に目を向けることが難しい。
そこで,投稿者が抄録作成を通して「行為の中のリフレクション」を題材とできるような支援として,査読プロセスを活用することとした。すなわち,投稿された抄録の内容に応じて,フォーマットで求めた論述の展開を促すようなコメントを提示し,複数回のやりとりを通して実践の意味の明確化をめざした。希望者には査読者を明かした上で,オンラインによる直接的な対話を通したオープン査読を試みた。
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