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はじめに
肝は代表的な転移の標的臓器である.これは門脈系臓器癌を中心に腹腔外臓器癌からも高頻度に肝転移をきたすことによる.肝転移治療におけるこれまでの画像診断は,主として病期診断および化学療法の効果判定を目的としたもので,数ミリ単位といった詳細な診断能を必要とすることはなかった.
1980年台となって,特に大腸癌の肝転移に対して肝切除が試行されてきた.当初その生存期間延長効果は懐疑的であったが,5年生存率が50%以上という良好な結果を背景として適応は徐々に拡大されている1).
原発巣と転移巣には臓器間特異性があるといわれる.これは血流量や血管構造などの解剖学的要因によると考えるanatomical-mechanical説や,遊離した癌細胞は自らの成長に適した環境を有する臓器で再増殖すると考えるseed and soil説があり議論されている2).有名なCascade理論はanatomical-mechanical説に経管性散布や体腔液の流れを加え各臓器間の転移に必要な時間の概念を入れたものである3).これらの仮説によって「肝転移には癌が全身病となる以前の肝に限局した段階」が存在する可能性が指摘され4),肝転移巣に対する外科切除の理論的根拠となっている.
手術に加えて,最近ではマイクロ波やラジオ波などによる局所療法も積極的に試みられるようになった.これらは一種の減量療法であり,多中心性再発の多い肝細胞癌でその効果が報告されてきたが,肝転移に対する治療法としての位置づけは明確ではない.
このように肝転移に対して手術を中心とした局所療法が積極的に導入されたことで,画像診断は治療の適応や方法の決定に重要な役割を果たすことになった.腫瘍の正確な存在診断だけでなく脈管侵襲や合併症の診断などに対してミリ単位の詳細な診断能が要求されるに至っている.
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