特集 実践と結びついた看護理論をつくる—状況特定理論をヒントに
1.実践の知を看護理論へと導くために—状況特定理論の構築から考える
1-5 状況特定理論をめぐる動向
坂下 玲子
1,2
,
小野 博史
1
1兵庫県立大学看護学部
2兵庫県立大学臨床看護研究支援センター
pp.446-455
発行日 2019年10月15日
Published Date 2019/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201678
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状況特定理論の必要性
状況特定理論は,研究および実践とより密接にリンクする理論が必要であるという看護界の要請に応え,Im, & Meleis(1999a)が,新しいタイプの理論として提案したものである。
例えば,移行に関連した現象はトランジション理論によって説明することができるだろう。しかし,実際の移行にはさまざまな状況があり,例えば,閉経後の更年期障害(Im, & Meleis, 1999b)もあれば,脳血管障害により身体の麻痺が発生するという状況もあるだろう。概念枠組みとしてトランジション理論は使えるが,更年期障害と脳血管障害では,移行の過程に影響を及ぼす具体的要因は異なり,また人々が示す反応も異なる。実際に看護を提供するには,より対象者の状況に即した細かな「促進と障害」要因の検討が必要であり,それに即したアウトカムを確実にする効果的な看護介入が検討されるべきである。特に,理論を実践に活かすには,具体的な看護介入の内容を導けるレベルまで,理論の抽象度を下げることが必要である。
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