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抽象化レベルによる理論の種類
Types of Theories by Level of Abstraction
看護理論は,抽象化のレベルにより,大理論(Grand Theories),中範囲理論(Mid-Range Theories),状況特定理論(Situation-Specific Theories)・小理論(Micro Theories)・実践理論(Practice Theories)の大きく3つに分類される。抽象化のレベルとは,言い換えれば,その理論が扱うことができる現象の範囲である。
最も古い歴史をもつ大理論は,「看護の本質」「看護の使命」「看護ケアの目標」といった,看護の概念的な領域を体系的に構築する最も抽象度の高い理論である。次に生まれた中範囲理論は,大理論に比べ適応範囲が限られ,抽象度は低く,特定の現象や概念を扱うため,より実践を反映しやすい。大理論に比べて抽象度が低いとはいえ,中範囲理論で扱う現象や概念は,異なる看護領域を横断し,さまざまな看護ケアの状況を反映するものであるため,一般化可能な知識体系が存在する。つまり,中範囲理論が扱う概念は,研究レベルで精錬され一般化されるが,その概念の数が大理論に比べて少なく明確であるため,実証可能性が高い代わりに,一部の多様性も保障するといった性質がある。そして,この3つの分類の中で,最も抽象度の低い理論の1つが,今回取り上げる状況特定理論である。状況特定理論は,臨床での実践を反映し,特定の対象または特定領域の看護実践に限定された看護現象に焦点を当てた理論であり,Im, & Meleis(1999)により体系化されていった。同じく抽象度の低い理論として,小理論や実践理論と呼ばれるものもある。実践理論とは,看護目標達成のための必要な行為を説明する理論であり,実践を導く理論であるという点で,状況特定理論はこの実践理論(小理論)に分類することも可能である。実際,Peterson(2017, p.28)は,状況特定理論を,実践理論および小理論と同じカテゴリーに分類している。このように,状況特定理論は,研究者の考え方や場所の違いによって,さまざまな呼称が用いられている。アメリカの西海岸および東海岸においては状況特定理論と呼ばれているが,中西部や南部で学んだ人たちは小理論,もしくは実践理論という言葉を使用することが多い。
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