増刊号特集 1 看護学の知をどう構築するか
看護学の「知」の構築と看護学研究のこれからに思う
井上 智子
1
1国立看護大学校
pp.295-299
発行日 2017年7月15日
Published Date 2017/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201389
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
「樹木にとって最も価値あるものは何かと問われたら,それは果実だと誰もが答えるだろう。しかし,実際には種なのだ」。ドイツの哲学者,フリードリッヒ・ニーチェの言葉である。哲学的解釈はひとまずおくとしても,内容にはなるほどとうなずかれる方も多かろう。研究になぞらえるなら,研究過程は樹木の生長であり,果実は研究成果(結果)となるのであろうが,それでは研究における「種」とはいったい何を指すのであろうか。
相対性理論の生みの親,アルバート・アインシュタインは「想像力は知識より重要だ」と述べた。知識の蓄積と網羅,すなわち「知」の構築・体系化をめざして研究活動が行なわれると考えるなら,「知識」に勝るという「想像力」を不可欠とする研究活動のめざすものは何なのであろうか。そもそも研究と「知・知識」との関連はどうなっているのか。
禅問答のようになりかけるので,本特集の趣旨に戻り,「看護学が実践の学としてどのような知が必要であり,どのようにその知を探究し,構築していくのか」という問いの中で,看護学研究はどうあればよいか,ありたいかについて,ささやかなまとめを試みてみたい。
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.