増刊号特集 1 看護学の知をどう構築するか
「看護学の知」とは何か─研究と業務改善の比較から考える
グレッグ 美鈴
1
1神戸市看護大学看護キャリア開発学分野
pp.300-304
発行日 2017年7月15日
Published Date 2017/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201390
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看護学の知の考え方
看護学の知については,主にアメリカの看護界で議論されてきた。1978年にCarper(1978)が「看護学の基本的な知のパターン」の論文を著し,看護学には科学に基づく経験知のみならず,異なる種類の知があることを明らかにした。それ以降も,どのような知が看護に最も適切あるいは有用か,方法論として主に実証的なものであるべきか,解釈的研究はどこに位置づくか,どのような種類の知が看護にとって優勢であるべきかが議論されてきた。しかし,これらは答えることのできない問いであり,どのような知識が看護の知として適切なのかを問うのではなく,知と知る人との関係を問うべきという主張もある(Ceci, 2000)。知識の構築が経験主義的方法で行なわれても,解釈的方法あるいは別の方法で行なわれても,知識は私たちが存在する世界のパワーと無関係ではなく,何が看護学にとって正当な知識であるかを問うとき,誰にとってそうなのか,何が正当性を決めるのかを考えなければならないという主張である。
Chinn & Kramer(2015)は,知は自己と世界を認識し理解する方法を意味し,知識は他者に伝えたり,他者と共有できたりする形で表現されるものをいうと定義し,知と知識を異なるものとして捉えている。しかし本稿では,知と知識を同義語として用いる。
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