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はじめに
R. バーク・ジョンソン氏とマイク・D. フェターズ氏による本ワークショップ註1は,混合研究法(Mixed Methods Research ; 以下MMR)初学者を対象とし,MMRを用いた研究,つまり「混合型研究」を実施する具体的なステップについて学ぶことを目的としたものである。65名の参加者を得た本ワークショップは,今回の学術集会において提供された六つのワークショップの中では最も大所帯のものとなった。このことは,日本におけるMMRの関心の高さを示すものであると同時に,今後MMRが積極的に研究の中で用いられていくであろうことを予感させるものであった。
本ワークショップ担当講師の一人であるR. バーク・ジョンソン氏は,南アラバマ大学教授であり,教育評価の博士号をもつ。彼はまた,非常に学際的なバックグラウンドを有し,学士号は心理学,修士号は社会学と行政学のダブルディグリーをもつ。もう一人の講師であるマイク・D. フェターズ氏は医師であるが,文化人類学や公衆衛生学のバックグラウンドも有する。彼は高校時代に日本に留学した経験があり,日本語が非常に堪能で,日本文化に対する造詣も深い。本ワークショップでフェターズ氏は,日本語で講義を行なっている。フェターズ氏はミシガン大学医学部の日本家庭健康プログラムの創設主任であり,Journal of Mixed Methods Research(JMMR)の現共同編集委員長でもある。また氏は,2015年10月にはMichigan Mixed Method Research and Scholarship Programの共同主任に,MMRの研究者の中で世界的に最も著名なジョン・クレスウェル(John W. Creswell)氏とともに就任している。
ワークショップ1は大会第1日目午前中の3時間にわたって実施された。本ワークショップの進行において特徴的であった点は,参加者がMMRの基礎的知識について講義を通じて学ぶ一方で,実際に新たに学んだ知識をもとに自身の研究計画書を作成していくという,非常に実践的なアプローチを採っていたことである。ワークショップの終盤で参加者たちは,研究計画をまとめたポスター(p.13資料参照)の横に立ち,その内容について互いにフィードバックを与え合い,質疑応答し合うこと(ポスターセッション)で,MMRに対する理解を深めていた。なお,ワークショップは,ジョンソン氏が英語で,フェターズ氏が日本語で行なった。英語が苦手な参加者のために,スライドはすべて日英両語で準備されていた註2。
会場となった立命館大学大阪いばらきキャンパスのラーニングシアター(Learning Theatre)教室は,四方の壁のあちらこちらにスライドが投影できるようになっており,対面式に座れるようにアレンジされた複数の机と椅子が集まってできたいくつもの島がフロア全体に設置され,インタラクティブなワークショップには絶好のスペースであった。会場では終始和やかなやりとりがかわされ,時おり笑い声も上がっていた。脅威を感じさせない明るい雰囲気は,MMR初学者の学びの場としては最適であったといえよう。
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