連載 混合研究法入門・4
混合研究法の手続き(その2)
抱井 尚子
1
1青山学院大学国際政治経済学部
pp.500-506
発行日 2015年8月15日
Published Date 2015/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201165
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はじめに
連載第3回では,混合研究法の手続きに関する前編として,混合研究法の定義と特徴,研究目的,研究設問,サンプリングについて概説した。連載第4回の本稿では,後編にあたる内容として,研究デザインとその類型,および質的・量的アプローチの統合方法について紹介したいと思う。
研究デザインの類型は,混合研究法初学者にとっては,当該研究アプローチを理解する上で非常に有益な情報であるといえる。混合研究法を用いる理由や目的がどこにあるのかを明確にすることによって,用いるべき適切なデザインが決まる。デザインはまた,家造りにおける青写真のようなもので,この部分に問題があれば完成した家は欠陥住宅になってしまう。つまり,デザインに問題がある場合,得られる研究結果は妥当性や信用性のないものとなってしまう。したがって,デザインは,量的・質的研究の評価規準に照らし合わせて厳密な手続きを踏んだものとなるように,慎重に検討されねばならない。
一方,「統合」は,第三の研究アプローチとしての混合研究法ならではのユニークな特性であり,当該研究アプローチにおいてもっとも重要な,量的・質的研究を結び付ける部分となる。統合は,データ収集,データ分析,結果の提示といった,研究プロセスにおける異なる段階において行なわれ,それぞれの段階に特徴的な課題がある。近年はまた,文字数が多くなりがちな混合研究法の論文を執筆する上で,結果の統合を効率的に可視化する具体的な戦略も次々に紹介されてきている。
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