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はじめに
これまで二回にわたる連載では,混合研究法の誕生から現在に至るまでの背景情報を,要点を絞って提供させていただいた。これにより,読者の皆さんの混合研究法に対する理解が,「質的研究と量的研究を併せ持った研究アプローチ」という,表層的な認識以上のものとなったのであれば幸いである。ここからはいよいよ,話題を混合研究法の手続きに移していく。予定では,第3回のみで混合研究法の手続きについて皆さんに紹介することとなっていたが,この話題は一回の連載では網羅しきれないと判断した。したがって,当初の予定を変更し,第3回と第4回の二回の連載にわたり,当該研究アプローチ独特の調査の進め方について概観したいと思う。具体的には,第3回で混合研究法の定義と特徴,研究目的,研究設問,サンプリングについて取り上げ,第4回では研究デザインとその類型,そして質的・量的アプローチの統合方法について紹介する。
混合研究法は,複雑な現象の解明にこそ利用すべき研究アプローチである。混合研究法は時間とコストのかかるものであるため,比較的単純な現象の解明であれば,その利用はお勧めしない。ただ,ひとたび混合研究法を用いると決めたからには,当該研究法だからこそ達成可能な研究目的はどのようなもので,そこに至るために必要な研究手続きとはどのようなものであるかを,しっかりと理解しておく必要がある。そして,量的研究と質的研究の両方を実践する能力を備えていることが求められる。もちろん,混合研究法を用いた研究(以下,MM研究)をチームで分担して行なうのであれば,一人ひとりの研究者が両方の研究法に関してエキスパートである必要はない。とはいえ,パラダイムを越えて円滑なコミュニケーションを可能にするためには,最低限の基礎知識はお互い身につけている必要がある。その共有すべき基礎知識が,混合研究法ならではの研究目的,研究設問,サンプリング,研究デザイン,および質的・量的アプローチの統合方法といった,研究手続きに関する知識である。
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